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最高裁判所第二小法廷 平成8年(オ)2525号 判決 1997年2月14日

大阪市住吉区長居東四丁目二一番六号

上告人

サンケイサービス株式会社

右代表者代表取締役

喜夛幹夫

右訴訟代理人弁護士

山田庸男

李義

宮岡寛

岡伸夫

中世古裕之

大阪府吹田市広芝町四番三二号

右補助参加人

住宅開発株式会社

右代表者代表取締役

音納正一

金沢市西泉四丁目六〇番地

被上告人

株式会社シーピーユー

右代表者代表取締役

宮川昌江

右当事者間の大阪高等裁判所平成六年(ネ)第三〇三号損害賠償等請求事件について、同裁判所が平成八年九月一一日言い渡した判決に対し、上告人から一部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山田庸男、同李義、同宮岡寛、同岡伸夫、同中世古裕之の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河合伸一 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 福田博)

(平成八年(オ)第二五二五号 上告人 サンケイサービス株式会社)

上告代理人山田庸男、同李義、同宮岡寛、同岡伸夫、同中世古裕之の上告理由

第一、原判決は、判決に影響を及ぼすべき理由不備ないしは理由齟齬が存するので速やかに破棄されるべきである。

一、上告人は、控訴審において昭和六一年一二月一二日、アーバンソフト代表者山田から原形プログラムの販売権を一五〇万円で購入したものと主張し、その支払いについては同日株式会社三葉から売掛金二、六〇〇、〇〇〇円の入金があり(乙第三七号証の一、二)、その内一、五〇〇、〇〇〇円を原形プログラムの購入代金として山田に支払い、現金出納帳に未記入のまま処理し、残金の一、一〇〇、〇〇〇円のみ現金出納帳に一二月一五日付で入金処理していたものである(乙第一〇号証の三)。

ところが、原審は「このような会計処理が実際に行なわれたすれば、収入と支払いの区別を無視するもので、通常あり得ない会計処理であると言わざるを得ない」と判断し、右帳憑類の記載内容を無視するのであるが、だとすれば右帳憑を故意に改ざんするか偽造したとでも認定しているのであろうか。

たしかに通常の会計処理であれば一旦全額を収入に計上し、改めて支払分を計上すべきであるが、会計係が誤って差引き計算をした結果の残額のみ預金欄に収入計上してしまったもので、中小企業の経理処理としてあり得ない処理でもないのである。

現に、期末監査の際、担当の森徳久が領収書等のチェックから誤処理を発見し、修正伝票を起票しているのである(乙第四四号証の一乃至二三)。

仮に帳憑類を故意に作出したのであれば、むしろ正しく経理処理したものを記入する筈であって、これらの一連の伝票上の記載こそ真実性が高いと証拠評価すべきで「通常ありえない」としても、だから「真実性は高い」もので、明らかに原審は証拠判断を誤っており、理由不備もしくは理由齟齬に該たるものと認められる。

二、次に、原審は「被告のような業者がコンピュータープログラムの作成販売を企画する場合は」と判示しているが、上告人は一五人足らずの社員で構成され、業容としては自動車の販売、修理部門に六、七人、損保の代理業務に三人、マンション管理部門に二人、そしてコンピューターの開発部門に成田一人のスタッフで構成されており、コンピューターの開発は主たる業態からはずれており、成田が個人知識を生かして親会社のコンピューター化に助言、指導していたに過ぎず、情報誌に掲載してソフトを売り出した経験も全くなく、あたかもコンピューターの開発・販売の専門会社の如き「被告のような業者」と判示される謂れは全くないものである。」

原審は上告人会社を証拠に基づかず独断で専門の情報処理会社と決め付け、独自の構成をして上告人を敗訴させているのは理由不備の誹りを免れないものである。

三、次に、販売本数の認定について原審は「しかし、被告が当審において提出した右決算報告書等にしても、全期間にわたり振替伝票が揃っているわけではなく」「実際に売れた被告プログラムの数が僅かに八本というのはいかにも少なく、にわかに首肯しがたい数字と言わざるを得ず」と判示するが、これこそ全く証拠に基づかない独断と偏見であって、理由不備の認定と言わざるを得ない。

上告人は原審において、当該期間内の決算書及び決算書上の売上高の明細を総勘定元帳及び振替伝票により全て網羅的に一覧表にし、全ての証拠類を提出し、被告プログラムが八本しか販売されていないことを立証しており、仮に振替伝票が揃っていないとすればどの期間のどの部分かを明らかにすべきである。

しかも、被上告人が入手したとする被告プログラムも入手経路からして八本の中に含まれており、この一事からしても上告人の主張の正当性は十分証拠付けられていると言うべきである。

以上

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